出典元:サンケイスポーツ
阪神春季キャンプ(22日、沖縄・宜野座)Gを倒せ! 俺も祝う!! キャンプ初日から阪神の臨時コーチを務めていた川相昌弘氏(56)=元巨人、中日=が22日、約3週間の指導期間を終えた。練習開始前にはナインに「優勝祝勝会に呼んで」とエール。16年ぶりのリーグ優勝へ、自身の培った守備&バントの技術を存分に注入。現役時代、巨人の一員として虎を何度も苦しめた職人が、タテジマの背中を強く押した。
厳しい西日に照らされながら、チルドレンが黒土にまみれる。「俺にいいやつ(プレー)、見せてくれ!!」。川相臨時コーチが声をからす。午後3時40分からサブグラウンドで行われた最後の特守。矢野監督も参加し、100分に及んだノックの嵐が、リーグVへの序章だった。
「ぜひ一丸となって戦って優勝してください。応援しています。優勝したら、その時はぜひ優勝祝勝会に呼んでいただければ駆けつけますので。楽しみにしています」
約3週間の指導の最終日。朝の練習開始前にはナインを前に“G倒”を託した。現役時代は主に巨人でプレーし、指導者も歴任したことを考えれば異例のエール。代表として矢野監督から指名された高卒3年目の小幡は「いい報告ができるように選手一丸となって頑張ります」と約束した。
昨季3年連続12球団ワーストとなる85失策を犯した虎を立て直すべく、2月1日からジャージー姿で熱血指導。遊撃手として6度のゴールデングラブ賞を受賞した職人の教えに派手さはない。投げる方向に足を向けて、しっかりステップすること。常に送球を意識し、打球のラインの右から入ること。手で投げる緩いゴロも駆使して基礎をたたき込み、宿舎に帰れば現代流を導入した。
各選手とLINEでつながり、オフの日は選手個人の動画集を作成。スマートフォンで手軽に課題を確認できるようにした。小幡には膝の使い方について画像とともに指導。「(カージナルスなどで遊撃手として活躍した)オジー・スミスがハンドリングの練習をしているところ」など選手のために情報を収集した。
「基礎の部分をまずしっかりと作り上げて、そこから枝葉を出して花を咲かせる。そういう植えつけは、ある程度、できたんじゃないか」
最後の特守では、選手の目の色が明らかに変わっていた。川相コーチの「さぁ、ホームゲッツー! 当たり前のように捕れ」の檄に、三塁を守るD1位・佐藤輝(近大)が踊るようなグラブさばきを見せる。飛び入り参加の虎将が「ガッツ、ガッツ!」と励ます。それぞれが定位置につき、10回りのノック。糸原を中心に厳しく優しい声を選手同士で飛ばし合いながらノーミスで終えた。
「僕は(守備が)よくなると信じていますし、もしよくなかったら、僕の指導が悪かったんじゃないかな、と思います」
昨季12球団最少の43失策だった巨人との差を埋める。矢野監督は「球団の垣根も取っ払ってもらって。本当に良かった。感謝しています」と頭を下げた。川相コーチは佐藤輝らと個別面談し、内野陣で記念撮影。宜野座を離れるが、タテジマと深い絆で結ばれた。秋は古巣の3連覇じゃない。16年ぶりの美酒を味わう。(阿部祐亮)
★川相臨時コーチから指導を受けた阪神ナインの声
◆木浪 「継続してやることが川相さんへの恩返しだと思う。自分がうまくなるために継続していくことが大事。基礎をたたきこんで、基礎が大事だなと思いました」
◆D1位・佐藤輝(近大) 「基礎の部分を教わったので。川相さんがいなくなっても、やっていきたい」
◆D6位・中野(三菱自動車岡崎) 「非常にいい勉強になったと思います。考え方とかで新たな発見があったので、継続していけたら」